大規模風力発電について考える

先日、後輩の林業屋さんのお誘いで芦北、水俣地域で計画されている大規模風力発電を考える会に参加してきました。シンタクの地元である出水市やお隣の阿久根市でも以前から風力発電の計画があることは耳にしていたのですが、「地元が潤うんならいいんじゃないの~?」「風力発電って二酸化炭素出さないし自然エネルギーだしエコなんじゃないの~?」程度の認識しかなかったので、知識を深めるにはいい機会だと思い行ってまいりました。

建設予定地を歩く

まずは午前中、地質学の先生である長峰氏の話を聞きながら、実際の建設予定地である大関山を歩きました。地質学のことについては正直よくわからないのですが、簡単に言うと、この周辺の地形は表面を洪水安山岩という溶岩が覆っているらしく、土砂災害が起きやすいそう。2003年には水俣市宝川地区集川、同市深川新屋敷地区にて土砂災害が発生し、計19人の方が亡くなったとのこと。

建設予定地の付近は広範囲に皆伐されていました。あたりの山を見渡してみても皆伐された箇所や列状間伐の跡が目立ちます。

皆伐されたあとの様子
周囲の山々も皆伐跡が目立ちます

山頂近くには風量を計測する鉄塔と機械が設置されていました。

この地域の風量は東北あたりと比較して1/3ほどしかないらしく、国の基準ギリギリとのこと。採算が合うのかわからず、しかもこの山でできた電気は地元で使われるものではないそうです。

その他いただいた資料を読むと

・風車の全高は150m!これが15基!!(おそらく今回登った大関山の分だけで)

・風車1基の基礎工事だけで発生する土砂の量 10tダンプ1,500台分。その他造成や5mもの搬入路新設によってさらに大量の土砂が発生。これを「事業実施区域内」にて処理するため豪雨時の土砂災害の可能性が!!

などなど「えっ!?大丈夫??」ってなるようなことが書かれていました。

また、大関山のてっぺんあたりにある自然林にはヤマネというリスみたいな天然記念物が生息しており、その棲息域を脅かす可能性もあるそう。

山頂の大関山神社の古代の祠 この神社の近くでヤマネの棲息が確認されています。

チームドラゴンによる熊本豪雨災害以降の取り組み

午後は水俣市にある研修施設エコネット水俣にて、チームドラゴンの鶴さんと吉田さんに環境問題に対する取り組みと熊本豪雨以降の坂本町復興ボランティア事業についてお話しいただきました。チームドラゴンは元々、八代のトレイルランニングチームらしいのですが、熊本豪雨時の球磨川氾濫によって甚大な被害を被った八代市坂本町を復興すべくボランティア活動を行っているそうです。

氾濫の原因

鶴さん、吉田さんのお話によると、坂本地区の水害の原因は球磨川に建設されている瀬戸石ダムや増加している森林皆伐施業、シカの食害の急増による山林内の草本、樹木の新芽の減少などが原因となっているみたいです。

ダムって水から人々を守るためにあるんじゃないの?

見出しのとおり思ってる人多いんじゃないかと思います。少なくとも僕はそう思ってました。ざっと調べてみると、ダムには治水用と利水用があり、治水用っていうのはたぶん皆さん想像しやすいダムです。洪水時に一気に水が流れるのを防ぐために、一旦ダムでせき止めて少しずつ流すというもの。利水用は発電目的や下流域の農業利用が目的で、そのために常時水をためておくものです。

水力発電用のダムがあるのとか農業利用のためのダムがあるなんて当然知ってはいましたが、なんとなく漠然とそれらのダムも洪水から地域を守ってくれてるもんだと思ってました。しかし、この利水用ダムが現在大きな問題になってるんだとか、戦後~高度成長期に多く作られた発電用のダム等は、当時考えられていた将来のリスクを超えているみたいです。

水と同時にたまってしまった土砂(堆砂というらしい)がダム湖の湖底をどんどん上げて上流が氾濫しやすくなる。利水用のダムにとって水位=資源らしいので、常に水位は高く保っておかなければならない。しかし、近年は記録的豪雨が毎年のように起こる、そういったときに対応しきれない。しかも発電目的のダムは落差を利用して発電するという仕組みのため、この落差が原因となってダムより下流の地域の流速が速くなり被害を拡大させる可能性がある。などの問題が挙げられます。 

で、先ほどの瀬戸石ダムがまさに堆砂の問題を国に指摘されているダムだそう。

坂本地区にはかつて荒瀬ダムっていう発電用ダムがあったのですが、ダムのせいで洪水被害が増えていると地域住民は思っていたらしく、この住民たちの撤去申請によって2012年に撤去決定、2018年撤去完了したそうです。(この時の撤去申請運動にも鶴さんがご尽力されたそうです)地域の方の中には「もし荒瀬ダムが撤去されていなかったらもっと大きな被害になっていたかも」という方もいたとか。

山が水を蓄えられなくなっている

山自体の貯水力も以前より大きく減少してるそうです。

森林の皆伐が近年増加していて、先ほどの写真のように、山に登るとハゲ山になってるところがあちらこちらに見受けられます。バイオマス発電による木質燃料の需要増加などが原因みたいです。その他にも、大規模な太陽光発電所の建設によって広大な範囲の森林が皆伐されているみたいです。

また、鹿の急増のせいで森林の地面部に生える草や新しい木の芽がどんどん食べられてしまい植生がおかしくなっているそう。特にチームドラゴンの本拠地八代では被害は深刻で、山の地面は焼け野原のようになっているそうです。害獣ネットを張る活動を行った結果、区域内の植物が復活してきている例があるらしく、原因が鹿にあるのは確実みたいです。

山林にこれまであった草木がなくなってしまうことで、その根もなくなり、地表面の保持力や山の貯水力がなくなり水害が起きやすい状況になっているみたいです。

他人事じゃないな と

この日に聞いた話なんかをまとめると

・近年増加する記録的豪雨

・利水用ダムが抱える問題

・森林皆伐、鹿の食害による山の貯水能力の低下

といった水害、土砂災害の原因になる要素が揃っているといえます。これは、水俣、芦北地域だけに限らず全国的な問題なんじゃないかと思います。

これに、大規模風力発電の建設が始まって更に山が切られることになればもっと大きな問題に発展しそうな気がします。

僕たちの住む北薩地域も建設予定があるので、この問題を自分事として捉え、今後も説明会に参加するなどして、正しい知識をつけていかなければならないなと感じました。今回聞いた話も鵜呑みにはせず、賛成派、反対派の意見を両方聞いて、自分がどちらの立場に立つのかを考えていきたいと思います。

以上。ありがとうございました!

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